国家試験合格対策ドリルVol.1 国試の準備は春休みから

国家試験合格対策ドリル2016第1回

基礎的な事項は国試対策本だけでなく教科書でもおさえる

第105回の国試では、基礎的な事項でありながら、国試対策本に載っていない事項が多く出題されました。教科書やインターネットで、それらを補っておく必要があります。

第105回の特徴をみておきましょう。

加工された統計データではなく、原データも見ておく

【例題1】 第105回午前3(必修)

日本の平成25年(2013年)における業務上疾病で発生件数が最も多いのはどれか。
 1. 振動障害
 2. 騒音による耳の疾患
 3. 負傷に起因する疾病
 4. じん肺症及びじん肺合併症

【正答】 3

業務上疾病で発生件数が最も多いのは「災害性腰痛」と覚えている方が多いと思います。
しかしながら、「業務上疾病発生状況(業種別・疾病別)」では、数年前から、「災害性腰痛」の項目立てはなく、「負傷に起因する疾病」の内数として腰痛の集計が行われています。
別の項目立てとして、「非災害性腰痛」があり、こちらの方は、たとえば介護士が業務の上で被った腰痛などの集計です。
国試対策本のみで勉強するのではなく、実際の統計データを見てみるような学習をしなければなりません。これが将来の看護研究につながっていきます。

設問事項の反転

【例題2】 第105回午前8(必修)

日本の平成25年(2013年)における家族の世帯構造で最も少ないのはどれか。
 1. 単独世帯
 2. 三世代世帯
 3. 夫婦のみの世帯
 4. 夫婦と未婚の子のみの世帯

【正答】 2

世帯構造について、これまで問われてきたのは、高齢化を反映して、核家族化、夫婦のみの世帯、老老介護、独居老人に関することが多かったと言えます。
この問題は、これらの状況を裏返して、少なくなっている世帯構造を答えさせています。第105回午前1でも、少子高齢化を直接問題にするのではなく、あえて生産年齢人口の構成割合を答えさせています。
なお、「国民生活基礎調査」によって世帯構造を問題にする場合、「全世帯」と「65歳以上の者のいる世帯」との二段構えの統計データとなっていますので、取り違えないように注意が必要です。

ストーリーで答えを推理し、絞り込む

【例題3】 第105回午後13(必修)

咳嗽が起こりやすいのはどれか。
 1. 右心不全
 2. 左心不全
 3. 心筋梗塞
 4. 肺梗塞

【正答】 2

この問題は推理力が大事です。
左心不全の病態は、左心系機能不全により、心拍出量が低下し、それによって、肺静脈(肺から心臓に向かう)がうっ滞して、肺毛細血管の内圧が上昇し、血管外へ水分が漏出して肺うっ血、ひいては、間質を超えて肺胞内へ水分が漏出して肺水腫となります。このような肺循環障害により、呼吸困難が生じ、湿性咳嗽がみられ、湿性ラ音が聴取されます。気道収縮が出現して、心臓(性)喘息とよばれる喘鳴となります。場合によっては、毛細血管が圧の上昇により破綻した結果、ピンク色の泡沫状喀痰もみられます。そうして、下肢からの静脈灌流量を減らそうとして、起坐呼吸となります。
このようなストーリーで覚えると、正答に至ります。ここ数回で、状況設定問題でなくても問題文が長文化してきていますので、今後、ストーリーをたどるべき問題が増えるでしょう。

暗黙の知識の把握が必要な計算問題の傾向

【例題4】 第105回午前90(計算問題)

500 mLの輸液を50 滴/分の速度で成人用輸液セットを用いて順調に滴下し、現在80分が経過した。
このときの輸液の残量を求めよ。
ただし、必要ならば小数点以下第1位を四捨五入し、3桁の整数で答えること。

【正答】 300 mL

この問題は、成人用輸液セットは20滴/mLであることを知らないと解けません。なお、この輸液セットは一般用で、精密用(小児など)は60滴/mLです。
1分間に50滴の速度ですから、80分が経過した時点では、4,000滴を滴下したことになります。これを体積に換算するために、20滴/mLという暗黙の知識が必要になります。
20滴が1 mLになりますから、4,000滴では、4,000÷20 =200 mLとなります。
輸液の残量が求められていますから、元々あった500 mLから、滴下した分を引き算します。
よって、500 mL - 200 mL = 300 mLが残量となります。
なお、この問題は午前に出題されましたが、午後22(必修問題)で「成人用輸液セット1 mL当たりの滴下数はどれか。」ということが問われていて、「20滴」を答えさせています。これは、受験生の心理状態に影響を与えることを意図しているのかもしれません。

(約2年前までの)変更となった事項がすみやかに反映されている

【例題5】 第105回午後72

日本人の食事摂取基準(2015年版)で、身体活動レベルⅠ、70歳以上の男性の1日の推定エネルギー必要量はどれか。
 1. 1,450 kcal
 2. 1,850 kcal
 3. 2,000 kcal
 4. 2,200 kcal
 5. 2,500 kcal

【正答】 2

身体活動レベルⅠ、70歳以上の男性の1日の推定エネルギー必要量は1,850 kcal/日となっています。ちなみに、男性では、15~17(歳)の2,500 kcal/日が最も多く、18~49(歳)は2,300 kcal/日、50~69(歳)は2,100 kcal/日となっています。
女性の身体活動レベルⅠは12~14(歳)の2,150 kcal/日が最も多く、15~17(歳)は2,050 kcal/日、18~29(歳)は1,650 kcal/日、30~49(歳)は1,750 kcal/日、50~69(歳)は1,650 kcal/日、70歳以上は1,500 kcal/日となっています。なお、妊婦の付加量は、初期:+50 kcal/日、中期:+250 kcal/日、後期:+450 kcal/日で、授乳婦の付加量は+350 kcal/日となっています。
2010年版と比較して、随所で変更がなされているのですが、身体活動レベルⅠ、70歳以上の男性の1日の推定エネルギー必要量ということでは、2010年版でも1,850 kcal/日でした。
なお、妊婦の付加量については、2010年版では「末期」という用語になっていましたが、2015年版では「後期」という用語になっています。
他に、新たな事項としては、たとえば、午後77にHibワクチンが出題されています。

先輩たちから情報を集めよう

春休みは、こうして、先輩たちの体験を聴き出すことができる絶好のチャンスです。先輩たちからの情報収集に励みましょう。どのような参考書を使ったか、どこの予備校の講座がよかったか、模擬試験をどのように活用したか、などの情報が特に大事です。うまくいった体験よりは、うまくいかなかった体験を参考にさせていただくと、失敗を回避することができます。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。動画配信サイト「メディカルアップ」で名講義を公開中。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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