問題文をきちんと読まないと、正答を選べない出題が多い
第107回の特徴として、問題文をきちんと読まないで早合点をすると損をする出題が非常に多くなっています。これは、先ほどの、データベース型のバリエーションの一環と考えられます。
このような問題では、問題文で「条件づけ」をしていることが多いです。
そして、選択肢だけみると、事実として正しいものがたくさんあって、並んでいる、上の方の選択肢を選んでしまうと、そのまま次の問題に移りたい気になったりします。
受験者の側からは、これらを「引っかけ問題」と考えることもできますが、条件まで考慮して、きちんと憶えるように、ということでしょう。第107回では、このような出題が必修問題で数問あり、ここで正答を選べないと、足切りの対象になったりしますので、注意が必要です。
【例題1】 第107回午後23(必修)
呼びかけに反応はないが正常な呼吸がみられる傷病者に対して、まず行うべき対応はどれか。
1. 下肢を挙上する。
2. 胸骨圧迫を行う。
3. 回復体位をとる。
4. 自動体外式除細動器〈AED〉を装着する。
【正答】 3
一般の方が、倒れた人を見かけて、正常な呼吸をしているかどうかが判断できない場合、迷わず、胸骨圧迫を始めることになっています。場合によっては、AEDがあれば、それを装着します。
しかしながら、この出題の場合、「正常な呼吸がみられる傷病者」とありますので、胸骨圧迫やAEDの装着は不要で、回復体位をとって、救急車等を待ちます。
【例題2】 第107回午前37
ボディメカニクスを活用して、看護師が患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法で正しいのはどれか。
1. 患者の支持基底面を狭くする。
2. 患者の重心を看護師から離す。
3. 患者の膝を伸展したままにする。
4. 患者の体幹を肩から回転させる。
【正答】 1
いずれの選択肢も「患者の」となっていることに注意が必要です。
もし、「看護師の」となっていたら、ボディメカニクスとして最も重要な知識は、「看護師の支持基底面を広くする」ということです。しかし、この問題では、そうなっていません。
患者を仰臥位から側臥位に体位変換する方法は、トルクの原理を応用し、患者の身体を小さくまとめ、膝を立てて、肩と腰を支えて回転させ、体軸回旋運動を誘発させます。これによって、小さな力で患者を回転して側臥位にさせることができます。もう少し具体的にまとめると、患者に腕を組んでもらい、膝を立て、踵を殿部付近に近づけると、小さな力で回転を起こすことができます。患者の身体を小さくまとめることは、患者の支持基底面を狭くすることになります。
【例題3】 第107回午前38
入浴の際に血圧が低下しやすい状況はどれか。
1. 浴槽に入る前に湯を身体にかけたとき
2. 浴槽の湯に肩まで浸かったとき
3. 浴槽から出たとき
4. 浴室から脱衣所に移動したとき
【正答】 3
選択肢をみると、高齢者の入浴事故を連想させます。よくある事故は、他の部屋や浴室よりも脱衣所が寒くて急激な寒冷ストレスで脳梗塞や心筋梗塞となるものです。
しかしながら、問題文は「血圧が低下しやすい」となっています。寒冷ストレスでは、血圧が急激に「上昇」します。
入浴に伴い、血圧は著しく変動します。脱衣場の室温が低い場合は、入浴前にすでに血圧上昇が起こり、高温浴では入浴直後にさらに上昇します。その後、血圧は低下し始め、入浴後、およそ4、5分たった頃、収縮期血圧(最高血圧)は入浴前よりも5~30%低下します。入浴時間が長くなったり、湯温が高温となったり、高齢者、高血圧症の人だったりする場合は、変化率がさらに著しくなります。浴槽から出るときの立位動作に伴い、血圧がさらに下降する場合があります。これは起立性低血圧と同じメカニズムで起こると考えられていて、溺没、溺水の原因となる意識障害、湯のぼせ、湯あたりが生じる重要な要因です。
【例題4】 第107回午前62
特別訪問看護指示書による訪問看護について正しいのはどれか。
1. 提供できる頻度は週に3回までである。
2. 提供できる期間は最大6か月である。
3. 対象に指定難病は含まない。
4. 医療保険が適用される。
【正答】 4
「特別」という条件が付いていることに注意が必要です。
選択肢には、「提供できる頻度は週に3回までである。」というのがあり、「特別」というのを見逃すと、これを選んでしまいがちです。また、有効期限は6か月です。
「特別」訪問看護指示書は、急性増悪、終末期、退院直後などの場合に主治医の判断に基づき、週4回以上の訪問看護を14日以内利用することを認める際に、訪問看護指示書に加えて発行されます。気管カニューレや真皮を超える褥瘡のある者の場合は月に2回まで特別訪問看護指示書の交付が可能です。
疾患と、臨床上関係する特徴的な基本事項とが問われる
第107回では、疾患と、臨床上関係する特徴的な基本事項の組み合わせを問う出題が目立ちました。これらも、学習時にきちんとフォローする必要があります。
- 【例】急性大動脈解離
- ・・・マルファン症候群
- 【例】胸腺腫
- ・・・重症筋無力症
- 【例】ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IgA血管炎)
- ・・・紫斑病には、血小板減少性のもの、血小板機能異常性のもの、血管性のものがあることを押さえる必要があり、「IgA血管炎」に着目します。
- ・・・紫斑病性腎炎
先輩たちから情報を集めよう
春休みは、こうして、先輩たちの体験を聴き出すことができる絶好のチャンスです。先輩たちからの情報収集に励みましょう。どのような国試対策本を使ったか、どこの予備校の講座がよかったか、模擬試験をどのように活用したか、などの情報が特に大事です。うまくいった体験よりは、うまくいかなかった体験を参考にさせていただくと、失敗を回避することができます。
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長
日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。動画配信サイト「メディカルアップ」で名講義を公開中。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。
メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/