看護師interview
家族看護に力を注ぐ長屋さんのもとで育った救命救急センターの看護師は、「救命における家族看護」をどのようにとらえ、どのように実践しているのでしょうか。
二人の看護師さんにお話をうかがいました。
後悔を残さないようご家族によるケアを提案
佐藤 未来さん
救命救急センターでは、突然、自分の身内が生命の危機に直面していることを受け入れられないご家族もいるので、こまめに情報提供するように心がけています。緊急時は救命処置や治療が優先され面会できない状況ですから、そんなときこそ説明をしっかりすることが大切です。救命救急センターにいるほんの数日で間でも、ご家族の衝撃や不安に看護師として寄り添いたいと思っています。回復する人もたくさんいますが、お亡くなりになる患者さんもいらっしゃいます。ご家族は「ああすればよかった。こうしてあげたかった」と、後悔をずっと抱えたままになる可能性もあります。後悔を緩和するためにも、ご家族に患者さんのケアを一緒に行っていくことを提案しています。例えば、患者さんのお体にそっと触れたり、ベッドサイドにいることを提案しています。交通事故で緊急入院されたある女性のご家族は、意識が戻らず重篤な状況が続く中、患者さんに化粧水をつけて、「きれいになってよかったね」と声をかけていました。患者さんとご家族の距離を近づけることも私たちの役割。これからもご家族の想いを大切にしながら救命救急の現場で働いていきたいと思います。
成人式に出席させたい 母の願いを支えたチーム
山添 美奈子さん
新人の頃はご家族にどう接したらいいのか悩むこともありましたが、先輩方にサポートしていただきながら、徐々に、患者さんとご家族のサポートができるようになってきました。印象的だったのは、脳出血で寝たきりの患者さんを在宅ケアしていたご家族のことです。成人式の数週間前に発熱のため入院してこられました。「どうしても成人式に出席させてあげたい」
という母親の願いを知り、治療に携わるスタッフとご家族が一致団結してケアを実施しました。熱を下げるためのクーリングを行い、リハビリで座る時間を徐々に長くして体力をつけ、病院から成人式に向かうことができました。ご家族と気持ちをひとつにしたケアができたと実感した瞬間です。ご家族には、それぞれの状況があるので、家族看護に「これ!」という正解はないと思っています。私が常に大切にしているのは、自分がこの患者さんの家族だったらどう思うかということです。ご家族の表情や言動から何を必要としているか判断し、試行錯誤しながらも実践するようにしています。そうすることで、結果的にご家族の方から感謝の気持ちが返ってきます。今後もご家族の心の支えになるようなケアを大切に成長していきたいと思います。