冬期・直前講習で勉強に勢いを
本格的な受験勉強に向けて流れをつくりましょう
追い込みの時期の過ごし方
国試の勉強も追い込みの時期となってきましたが、臨地実習からの疲れもあり、どうしても年末年始に気が緩むということであれば、予備校の冬期講習(オンラインなど)に参加して、勉強に勢いをつけるようにすることをお勧めします。
学校によっては、この時期、いろいろな模擬試験を受けることもあるようです。模擬試験の解説集は、どんどん小奇麗な冊子になってきていて、それが模擬試験の信頼度であるかのように勘違いしがちですが、模擬試験には難問や奇問がたくさんあります。あくまで看護師国家試験の実際の過去問が基本であり、それに照らして、出そうな問題に取り組むようにしましょう。模擬試験は、一般に、看護国試よりも難しく作ってあります。特に、必修問題は、本番では80%以上できなくてはなりませんが、模擬試験では自分の正答率が80%に達しないということがよくあります。勉強が不足しているかもしれませんが、模擬試験のすべての問題が良問であるとは限りません。模擬試験は本当の試験ではありませんから、これで落ち込んではいけません。ただし、他の多くの人ができているのに、自分は間違った、という問題は、きちんとフォローするようにしましょう。
計算問題を恐れてはいけない
看護国試では、多くの方が苦手とする計算問題が出題されるようになっていますが、ここ数年は出題数が少なくなっています。計算問題の基本は、(1)単位をそろえ、(2)比例式にする、ということです。この基本に忠実であれば、計算問題の多くは、簡単に解けてしまいます。
計算問題についての正確な解説は、実は、意外と少なく、かえって混乱を与えるものもあります。今回、このような計算問題をきちんと扱ってみました。いずれもよく出る問題です。変な解き方をして、同じ計算結果が出るかもしれませんが、それではダメです。誤解をしていないか、解説も読んでチェックしてみてください。
看護国試の計算問題を正確に解こう
計算問題の基本は、(1)単位をそろえ、(2)比例式にする、ということです。
比例関係はどうしても基本的に大事です。
そして、比を表す比例式で、「内項の積は外項の積と等しい」という公式だけは、憶えておく必要があります。
この公式は、小学校などでは使用しないことになっていますので、使うのをためらっている方が多いかもしれません。中学校で、相似図形のところで教わることが多いようです。この公式は、社会に出ると大変有用なものですので、ぜひ使っていただきたいものです。
証明を示しておきますので、公式の方は安心して使ってください。
a:b=c:d ⇒ a×d=b×c
(証明)
a:b=c:d
比率は、分数にしても同様にはたらきます。
a/b=c/d
分母を通分(公倍数で共通化)します。
ad/bd=bc/bd
両辺が等しいということに注目すると、分母が共通であるため、分子も等しくなります。
ad=bc
こうして、a×d=b×cが導かれました。(証明終)
[例題1] (第103回午後23他)
点滴静脈内注射750mL/5時間の指示があった。
20滴で約1mLの輸液セットを使用した場合、1分間の滴下数はいくらになるか。
5時間かけて行うということで、分の単位にそろえると、5×60分=300分かかります。
1mLにつき20滴であるので、750mLでは、20×750=15,000滴となります。
300分で15,000滴の滴下数であるので、1分あたりでは、15,000÷300=50滴となります。
なお、現在、輸液セットは、20滴/mLのもの(成人用、一般用)と60滴/mLのもの(小児用、精密用)が用いられています。
第105回と第106回では、この前提知識が省略されました。この20滴と60滴というのは憶えておく必要があります。
【例題2】 (第104回午後90を改変)
5%のクロルヘキシジングルコン酸塩液を用いて0.2%の希釈液1,000mLをつくるのに必要な薬液量はいくらか。
この問題は注意が必要です。というのは、ここの%は、小中高までの%の扱いとは異なるからです。医療機関では、何も書いていなくても、薬剤の表記の「%」は「w/v%」(ウェイト・パー・ボリューム・パーセント)を意味します。そして、1w/v%は、溶液100mL中に1g溶けているということです。「w/v%」は「%(w/v)」と書くこともありますから、「%」は、「%(w/v)」の「(w/v)」が省略されたものと考えることができます。
よって、【例題2】は、本当は次のような問題なのです。皆さんも、このように翻訳して考えるようにしてください。
【例題2´】
5w/v%のクロルヘキシジングルコン酸塩液を用いて0.2w/v%の希釈液1,000mLをつくるのに必要な薬液量はいくらか。
公式のようなものもありますが、記憶があいまいですと、頭が混乱します。ここでは、公式は紹介せず、w/v%の定義に戻って解いてみます。その方が納得できると思います。
0.2w/v%希釈液ということから、0.2g/100mLの濃度であり、この希釈液を1,000mLつくるには、クロルヘキシジングルコン酸塩が2g必要となります。
5w/v%のクロルヘキシジングルコン酸塩液は5g/100mLですので、必要な薬液量をxmLとすると、クロルヘキシジングルコン酸塩そのものは2g必要なので、
5g:100mL=2g:xmL
より、5×x=100×2
よって、x=40mL。
濃度の計算などには、いろいろな公式がありますが、状況をイメージしないで公式を当てはめると失敗します。落ち着いて、単位をそろえ、比例関係を見出しましょう。
【例題3】 (第107回午前90他)
150kgf/cm2 500L酸素ボンベの内圧計が90kgf/cm2を示している。この酸素ボンベを用いて2L/分で酸素吸入を行うことになった。
使用可能な時間はどれくらいか。
酸素ボンベの内圧は、酸素が減れば、それだけ下がるため、酸素がなくなる少し前までは、比例関係が成り立ちます。また、kgf/cm2の単位のみならず、MPaでも同様に考えることができます。1MPa=10kgf/cm2という関係になります。
150kgf/cm2(充填圧)のときの酸素の量が500Lであり、90kgf/cm2のときの酸素の量をxLとします。
150:500=90:x より、
150×x=500×90
よって、x=300Lで、1分間に2Lの酸素を吸入しますから、300Lあれば、あと300÷2=150分の間、使用可能です。
通常はここまでで説明が終わりますが、現実的には酸素ボンベの容積というものがあり、また、ボンベを完全には空にしないこと、メーター誤差、メーター読み取り誤差、交換時ロス等を考慮して、使用可能量というものが設定されており、これは、酸素残量に安全係数0.8をかけたものになります。上の場合では使用可能量240L、使用可能時間120分間となりますが、看護国試では、今のところ、この最後のところは考えなくてもよい問題設定となっています。
〈参考〉カロリー計算について
カロリーの計算については、計算以外に、いくつかの暗黙の知識が必要です。それを憶えておきましょう。
(1)アトウォーター係数を憶えます。
・1gの脂質は9kcalのエネルギー
・1gの蛋白質は4kcalのエネルギー
・1gの炭水化物は4kcalのエネルギー
(2)脂質の場合には、エネルギー必要量が示されたときに、そのうち、どれくらいのエネルギーを脂質の摂取によって得るかの割合である脂質エネルギー比率を考える場合があります。これは、とりあえず、30歳以上の値で、「20(%)以上25(%)未満」と憶えます。計算では、
(エネルギー必要量)×(0.20~0.25)
とします。1gの脂質は9kcalですので、出てきた計算結果を9で割ると、適切な脂肪摂取量(g)が求められます。
炭水化物が問われた場合は、「50以上70未満」とします。
(3)炊いた状態の精白米100gあたりのエネルギーは168kcalであることを憶えておきましょう。
〈参考〉計算問題以外
・妊娠週数および日数を最終月経から求める問題に慣れておきましょう。また、分娩予定日を求めるネーゲレの計算法を復習しておきましょう。
・視覚素材問題で、たとえば、胎児心拍数陣痛図などのグラフを読みとることに慣れておきましょう。
東都大学客員教授、岐阜医療科学大学客員教授
日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。
メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/