国試直前の勉強の進め方
なりたい看護師を目指し、最後まであきらめない。
国試に本当に必要な事項に集中しましょう
最後まで勉強をやり切ろう
いよいよ看護師国家試験も目前に迫ってきました。ふだんから勉強をしている人は何も心配することはありません。受験者の90%が合格する試験だからです。ただ、必修問題で10問を超えて間違えると、他がよくても合格できませんから、それだけは注意が必要です。
忙し過ぎて、試験対策が全くできなかったという人は、あきらめたら、それで終わりです。最後まで、あがくことが大事です。あがき方ですべてが決まります。どうすればよいかというと、直前5か条を示しておきます。
直前5か条
- 体調管理に気をつける
- 出題されそうなところを勉強する(出そうにないところは手をつけない)
- 勉強したところは要点にまとめ、その要点を憶える
- 本当に直前になったら、あれこれと手を出さない
- 試験会場では、問題が配られる前まで、知識を整理する
直前の体調管理
まず、体調管理ですが、試験当日はもちろんのこと、試験勉強期間中も、勉強時間が失われますから、できるだけ風邪をひかないようにします。また、体を温める食べ物を摂ると体調が維持できます。試験当日は着脱しやすい服装にします。ここ数年、受験体験記を拝見しますと、どこの会場も寒く、オーバーを着て解答に臨んだ人が多いようです。ただ、昼になると暑く感じるようですので、調節が必要です。どこの会場もトイレが大変混むようです。早目に行動するようにします。昼食を摂ると眠くなると言われていますが、最近の生理学的知見では、起床後、8時間程で大脳が休もうとして眠くなる、ともされています。午後の試験で眠くなったら、目を短時間でも閉じると、頭がすっきりする場合があります。人によっては、下痢止めを持参しましょう。
何が出題されるか自分で予想してみる
この時期はもう、難しすぎるものには取り組まないのがよいです。難しいものの多くは、基本的なものが複合したものです。ですから、基本をたくさん身につけておくと、試験当日の頃には難しいものも自然と解けるようになっています。
そして、出題されそうなところを勉強するのが大事です。どこが出題されそうであるかを見極めるには、過去問に取り組むことが必要です。これは過去問の答を丸暗記するということではありません。過去問を解いたら、
(a)結局、この問題のポイントは何か、ということをノートに書き出してみる
ことをします。また、
(b)自分が出題者だったら、どのような問題を作るかを想像し、実際にアレンジしてみる
と実力がアップします。アレンジするときに、いろいろと調べると、必要な知識が拡がっていきます。
国試の傾向/勉強方法のアドバイス
ここで、国試の動向と、そのための勉強方法のアドバイスをまとめます。
新出題基準
第112回から、新出題基準によって、国試の問題が出題されます。
しかしながら、この出題基準というのは、あくまで、試験問題を作成する側の基準であって、試験を受ける側に向けての基準ではない、ということに注意が必要です。
出題内容を分析すると、基本的に「これまでとほぼ同様」であると考えられます。これは、作成側は、新型コロナへの対応で忙しいため、問題を作成している時間などはなく、出題範囲を変えることなく、過去問を利活用していく、ということかもしれません。そうすると、過去問に取り組まないと、損をする可能性が高い、ということになります。
過去問といっても、どれに取り組むのか、ということがあります。以前から、5回前ルールと言われており、第112回では、第108回~第103回あたりの過去問が出題される可能性が高いです。
なお、新出題基準で、小項目に新たに登場したものを次にピックアップします。しかし、これは、参考程度のものです。軽く調べておくと、よいでしょう。第111回に出題済みのものは除いてあります。
全体の傾向や注意点として、必修問題は「感染防止対策」、社会保障制度は「法や制度の近年の変更」、基本的な知識として学んでおくべき「疾患」、「地域包括ケアシステム」に関連するもの、などは、押さえておいた方がいいでしょう。
国試の傾向
最近の国試は、問題自体が重要ポイントを踏まえて出題されるようになっています。第110回では、看護者の判断の根拠となる評価(アセスメント)基準や判断基準についての出題が圧倒的に増えました。
多くの過去問を解いておく
新出題基準とは別に、医道審議会から出された報告書で、「既出問題は、引き続き活用する。必修問題では、より積極的に既出問題を活用していく」と明言されました。受験生は、よく、過去問はもう出題されないと思い込んでいますが、過去問が出題されると言っているのです。過去問を解くことで、出題されそうにない問題を見抜く力を養うこともできます。
自分でも問題を作ってみよう
「設問→(過去問での正答)→それと関連する事項」といった形で、自分でも、「それと関連する事項」が答えとなるような問題を作ってみると、暗記に頼る勉強(想起型)ではなく、理解に基づく勉強(思考型)に変わっていき、力が急に身に付いていきます。
教科書に立ち戻る
ここ数回、いわゆる国試対策本で説明されていない項目をあえて選んで出題している可能性が見て取れます。教科書に立ち戻って、知識を補うようにします。
看護に求められる判断プロセス
新出題基準とは別に、数年前から看護師国家試験の制度改善が検討されていて、「看護における判断プロセス」が出題のキーワードになっています。
「看護の臨床において、介入を通して直接得る多様な情報を段階的・総合的に判断した上で、患者や家族等とともに看護を決定していくプロセスを問う必要がある。出題の方法には、(1)判断プロセスについて問う、(2)判断そのものを問う、(3)判断するために必要な情報は何かを問う、(4)情報を列記したなかで優先度を問う、(5)介入の結果から判断の根拠を問う、などがある。」
このような判断プロセスにあって最も重視されているのは、情報を取捨選択する、ということです。これは、意外にも、日本語力が関係してきます。状況設定問題の過去問をよく読み込んで、読解力を高めましょう。そして、看護技術と同時に、根拠(エビデンス)自体を知識として持つような学習をすることも望ましいです。
たくさん勉強しているのに成果が上がらない方へ
国試対策本やまとめの本は、周りの多くの人が使っているもので勉強すると安心ですが、この時期になっても、まだ調子が出ないという方は、仕方がありませんから、自分に合った国試対策本に一刻でも早く切り替えてみる、というのも一つの手です。
過去問を解きながら、国試対策本同士を見比べる「比べ読み」をしてみると、見方が立体的になり、問題の意図するところが、急に、よく分かってくるようになることがあります。そして、本当は、どの国試対策本が良いものなのか、見極めもつきます。
直前には、あれこれと手を出さない
さきほどの(a)を増やしていけば、要点集となります。国試直前には、こういうものを復習することが理想的です。直前の時期になって、これまで手をつけていなかったものに手を出すと、あれもやっていない、これもやっていない、となって、意気消沈してしまいます。
問題が配られるまで要点を見直す
試験当日は、問題が配られるまで、このような要点を見直します。不思議なことに、受験体験記を拝見しますと、試験開始間際に見ていたものが出題された、ということが多いようです。場合によっては、国試対策本や、受験雑誌の付録となっている要点集やデータ集を持参して、間際まで眺めてください。これらの付録を使うのであれば、試験前に一通り目を通しておくべきです。
試験当日の昼休みに、友達同士で午前の試験のでき具合を確認することがよく行われているようですが、これはやめましょう。当日は互いに別行動をすることを事前に申し合わせて、問題が配られるまで、あがきます。このような配慮をするというのが本当の友情というものです。なお、解答のマークシートは横型と縦型があり、隣の席の人が横型であれば、自分は縦型で解答することになります。午前と午後で同じ型のものとなります。2種類のマークシート用紙のサンプルが国試対策本に掲載されていたりしますので、とっさのことに対応できないという人は前もって慣れておくようにしましょう。
長文の問題はメリハリをつけて黙読
看護師国家試験の問題の文章は長文になってきています。出題の意図が見えてこない場合、イントネーションとアクセントをつけて何度も黙読し、また、その読み方を少し変えると、何が問題になっているかが浮かび上がってくるはずです。
本年度の試験も、コロナ対策で、試験会場に行ってから、思いがけない指示が出る可能性があります。とっさのことに影響されず、集中力を切らさないようにしましょう。
試験で皆さんが最大限に力を発揮できますよう祈っております。
東都大学客員教授、岐阜医療科学大学客員教授
日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。
メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/