国家試験合格対策ドリル(2024〜2025)Vol.1 国試の準備は春休みから

国家試験合格対策ドリル(2024〜2025)第1回

第113回の出題から学びたいこと

第113回の受験生の多くは、今回は難しかった、という感想を述べているのですが、国試対策のプロの眼からは、むしろ平易でした。難しく感じたのは、看護専門学校からの受験生は、今回が、新型コロナ世代の一年目に当たり、対面授業を余り受けることができず、勉強の仕方がよく分からなかったのではないか、と思われます。
第113回の出題における最大の特徴は、「知識」以上に「言語表現」を重視していることではないか、と思われます。すなわち、問題文や選択肢で使われている日本語の表現の正確な把握が問われていて、その一方で、正答になる選択肢は、正答らしからぬ曖昧な表現が設定されており、迷わせているものが多く、問題全体で「ひっかけ問題」のようになっています。これは、これまでの国試のあり方と異なり、知識そのものを問う問題を越えて、どれが、正確な言語表現となっている知識なのかを読み解くものとなっています。
言語表現の重視ということでは、第113回では、さらに、英語系のカタカナ語を意識して解答すると、解くのが有利である問題が多かったと言えます。たとえば、リロケーションダメージ(午前49)とかデイストラクション(午前56)というのが、それに当たります。多くの看護専門学校では、英語に触れる機会が、どんどん減ってきていますので、カタカナ語の用語集に、一通り、目を通しておくのがよいでしょう。
第113回でも、過去問を利活用した問題が、割と多く出題されました。以前から、5回前ルールと言われており、第113回では、第109回~第104回の過去問を中心に、過去問が利活用されることが予想されましたが、ほぼ、その範囲に収まっていて、これよりも少しだけ古い問題が何問か使用されています。よって、第114回を受験する方は、第110回~第105回の過去問に取り組んでおくとよいでしょう。これまでは、過去問の利活用に、特に規則性は見出せませんでしたが、今回、通常のレベルの問題は新作が多かったのですが、難しいレベルの問題については、過去問を利活用しているように見受けられました。
前回の第112回では、一つの問題の項目において、取り得る選択肢を整理して出題するようになっている問題が何問か出題されていました。そのような問題では、他の選択肢と見比べて解答することになり、知識を整理して覚えている受験生には有利なものと言えます。第113回では、そのような問題は少なかったものの、そのように作られている出題がありました。

【例題1】 第113回午前23(必修)(採点除外となった問題)(改変)

次の中で、待機的治療群となるトリアージタッグはどれか。

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④

【正答】 3

この問題は採点除外となりましたが、特に難しいわけではありません。しかも、別冊の中の唯一の視覚素材問題です。

トリアージとは、災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合に、傷病の緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めることです。そして、トリアージタッグとは、トリアージの際に用いる識別票のことです。

「待機的治療群」というのは、中等症群のことであり、「多少治療の時間が遅れても、生命には危険がないもの(今すぐに治療しなくても生命に影響はないが、放置しておくと生命の危険があるもの)」という意味です。

正答率が低かったですが、この問題は、基本的に、「待機的治療群」という日本語の表現の問題です。

【例題2】 第113回午後61

看護師のメンタルヘルスに関する対応で一次予防はどれか。
1. 入職時のストレスマネジメントに関する研修
2. 精神的不調が生じた看護師への公認心理師による相談
3. 精神的不調で休職している看護師への復職支援プランの作成
4. 精神的負荷がかかっている可能性のある看護師への産業保健師による面談

【正答】 1

この問題は、「言語表現」に関する問題と考えることができます。

「一次予防」ですから、すでに精神的不調となっていたり、精神的負荷があったりするのは、該当しないことになります。

よって、選択肢の中で、「精神的不調が生じた」、「精神的不調で休職している」、「精神的負荷がかかっている」といった表現をしているものは、当然、正答ではないことになります。

【例題3】第113回午後95

AさんはR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)を受けた。

AさんのR-CHOP療法の初日に生じる可能性がある合併症はどれか。

1. 脱 毛
2. 口内炎
3. 低血糖
4. 好中球減少症
5. 腫瘍崩壊症候群

【正答】 5

これは、一つの問題の項目において、取り得る選択肢を整理して出題するようになっている問題です。

12~72時間以内に生じる合併症ということでは、腫瘍崩壊症候群ということになります。他の選択肢を考えますと、口内炎(1週)、好中球減少症(1~2週)、脱毛(2~3週)となります。

先輩たちから情報を集めよう

春休みは、こうして、先輩たちの体験を聴き出すことができる絶好のチャンスです。先輩たちからの情報収集に励みましょう。どのように教科書に取り組んだか、どこの予備校の講座がよかったか、模擬試験をどのように活用したか、などの情報が特に大事です。うまくいった体験よりは、うまくいかなかった体験を参考にさせていただくと、失敗を回避することができます。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長

蜂谷 正博 メビウス教育研究所 塾長、
東都大学客員教授、岐阜医療科学大学客員教授

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『看護・医療系のためのからだと病気の基礎知識』(東京化学同人)など。
元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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