まとめの実例
以下では、解剖生理学を土台にして知識を有機的にまとめるということに、消化器系(蛋白質の消化、脂肪の消化)を例にして、実際に取り組んでみることにしましょう。
【蛋白質の消化】
【脂肪(脂質)の消化】
このように、パネルの形でまとめていくと、いろいろに展開できます。
ここでは、一例をご紹介しているにすぎませんが、一般に、解剖生理学から病態や薬理にリンクさせていくときにキーポイントとなるのは次の三点です。
- 解剖生理の内容(健常の状態)を否定すると、病態生理の内容になる
- 受容体の存在が解明されているときは、その仕組みに着目する
(受容体は、刺激物質がカギであるとすれば、カギ穴の関係にあり、受容体への刺激物質の結合によって、特定の生理的作用が引き起こされる。酵素の促進・抑制の働き、自律神経系の働きなどが生理的作用のキーとなっていることもある) - ホルモンは血中に分泌されるということに留意する
受容体は、医師や薬剤師の方ではよく取り上げられますが、看護師の方では、学習内容が難しくならないように、余り取り上げられてきませんでした。受容体に言及しないことで、かえって、生理的メカニズムや病態生理をイメージすることが難しくなり、学習内容が頭に入らず、憶えられなくなります。現場に出ても必要な知識ですので、この際、憶えてしまいましょう。
疑問点の発見が大事
国試対策用のノートやルースリーフに書き出してみる、あるいは、大きめの紙にポスターのようにして書いて自宅の壁に貼ってみると、自分の手を動かすことになって、頭もはたらいてきます。実習病院や学校によっては、病態関連図という形で書く訓練をしていることがありますが、ここでは国試対策用として作成します。書き出してみると、次が書けないことがよくあります。「あれ~、何だっけ?」このことが重要なのです。たんに知識不足の場合もありますが、まだ解明されていないこともあります。また、教科書や国試対策本の盲点となっていることもよくあります。このような疑問点を見つけることが大事です。疑問点は学校の先生に訊いたり、インターネットで調べたりして、はっきりさせましょう。そもそも解明されていない場合は、将来の看護研究につなげていくと、展望が開けてきます。
自分の手を動かし、自分の頭をはたらかせることがいいのですが、自分一人やグループ学習で進めるのは、時間の制約や学習環境の点から、難しいことがあります。そのような場合は、暗記ではなく、理解することを重視している予備校の講座などを利用するとよいでしょう。そのような予備校では、解剖生理学から病態・看護にリンクさせるということは共通の認識となっています。盲点となっているところを教えてくれる先生に出会えれば、目からウロコがおちるように、今まで分からなかったことが次から次へと分かるようになるでしょう。
東都大学客員教授、岐阜医療科学大学客員教授
日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『看護・医療系のためのからだと病気の基礎知識』(東京化学同人)など。
元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。
メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/